
はじめに
2026年5月、改正入管法が参院本会議で可決・成立しました。その内容の中、日本に居住する外国人や外国人労働者を雇用する企業にとって特に影響が大きいのは各種許可申請にかかる手数料の大幅な値上げでしょう。今回は在留資格の手数料の値上げについて、労務の視点から解説します!
今回の改正のポイント
今回の改正で値上げの対象となるのは①在留資格変更許可、②在留期間更新許可、③永住許可の3つとなり、在留資格の新規申請における手数料は据え置きとなります。改正入管法では①②の手数料上限を10万円、③を30万円までの範囲で政府が定められることとされ、これを受けて2026年8月25日の閣議で具体的な金額が決定しました。
※参考 法務省「法務大臣閣議後記者会見の概要」
https://www.moj.go.jp/hisho/kouhou/hisho08_00966.html
前回改定の2025年4月は数千円規模の見直しでしたが、今回は変更・更新は最大で10倍以上、永住許可で約20倍の引き上げとなります。具体的な金額は次の表のとおりです。
<在留手続 手数料の新旧比較(窓口申請)>
手続きの種類 | 現行(2025年4月〜) | 2026年10月1日〜 |
|---|---|---|
① 在留資格変更許可 | 6,000円 | 在留期間に応じ1万〜7.5万円 ※ |
② 在留期間更新許可 | 6,000円 | 在留期間に応じ1万〜7.5万円 ※ |
③ 永住許可 | 10,000円 | 200,000円 |
※ 変更・更新の在留期間別(窓口・代表例):3か月以下=1万円/1年=3万3,000円/3年以上5年未満=6万4,000円/5年以上=7万5,000円。オンライン申請は各区分で別料金(ただし永住許可は窓口申請のみで受付)。
更新料を福利厚生の一環として会社が負担している企業、とりわけ外国籍の従業員を多く雇用している企業にとって、この値上げの財務的インパクトは決して小さくありません。
企業への影響と対策について
1)会社に負担義務はある?
そもそも会社に、外国人従業員の就労ビザ更新の手数料を負担する義務はありません。しかし実務上は、海外から内定者を招いて日本で就業させる際に会社が就労ビザの手配をサポートし、その流れで在籍中の更新料も会社が負担するケースは多く見られます。また、すでに日本に居住している人を転職で受け入れる場合も、採用競争力を高める施策の一環として更新料と手続きのサポートを会社が負担するケースはあります。数千円〜であっても日本で働く限り発生し続けるコストと手間を考えれば、採用候補者がサポートの手厚い会社を選びたいと考えるのは自然でしょう。
しかし、ここまで大幅な値上げとなると財務的インパクトは無視できません。特に外国人労働者を積極的かつ大量に雇用している会社では、その負担は相当な額に上ります。
2)会社がとれるアクションは?
政令の施行日は2026年10月1日です。施行に伴い、会社は更新料負担の社内ルールを整え今後の外国人労働者の採用計画や人件費予算も併せて見直しておくとよいでしょう。
まず押さえておきたいのは、手数料が発生する場面ごとに影響が異なる点です。海外から人材を呼び寄せる際の在留資格認定証明書(COE)の交付申請はもともと手数料がかからず、今回の値上げの対象外です。その後に申請するビザの申請についても手数料は据え置きとなります。一方で、国内で留学から就労へ切り替える場合や転職時の「在留資格変更」、在籍中に繰り返し発生する「更新」、そして「永住許可」は、いずれも今回の値上げの対象です。このことに留意した上で、今回は「更新」にフォーカスして以下の対応を検討するのが良いでしょう。
① 会社負担額に上限を設ける
たとえば、入社時に必要となる在留資格の取得・変更は会社負担として一定の採用競争力を保ちつつ、入社後に繰り返し発生する更新については一定の上限を設けることで、費用の膨張を抑えることができます。もちろん、外国人労働者の雇用が会社の重要課題であるならばあえて全額負担を継続するのも一手です。
ただし、就業規則に手数料を全額負担する旨を明記している場合は不利益変更となるため、慎重に手順を踏んで進める必要があります。また、雇用契約書にその旨を明記している場合も同様です。
② 在留期間の長さに応じて上限を段階的に設ける
新しい手数料は、在留期間が長く認められるほど1か月あたりの負担が割安になるよう設計されています。会社が負担上限を設ける際も、この段階制に合わせて上限を設定し、実質的には長期の在留期間を認められている人材(=安定して就労し、信頼を積み重ねている人材)ほど恩恵が大きくなる設計にするのも良いでしょう。ただし、同一労働同一賃金の観点から、正社員と有期雇用労働者といった雇用形態の違いだけで差異を設けることがないよう留意が必要です。
③ 在留期間が長く認められるよう社内でサポートする
出入国在留管理局が在留期間を判断する際の材料は、本人に関する情報だけではありません。勤務先の会社が法令を遵守しているか、たとえば労働保険・雇用保険・社会保険(厚生年金・健康保険)の加入要件を満たす従業員をもれなく加入させているか、納税漏れはないか等も含めて審査され、それは在留期間を決める上での重要な判断材料になります。基本的な労務管理が漏れなく対応できているかこの期にチェックすると良いでしょう。併せて、必要書類の不備や記入誤りによる追加手続き・不受理を防ぐため、会社による申請手続きのサポートは引き続き行うことが望ましいといえます。
これらの対応は実務面の負担が大きくなるように見えますが、これは従業員への配慮であると同時に、最終的には会社のコスト削減にもつながります。たとえば5年の在留期間が認められた場合、手数料は5年に1度の7.5万円で済みますが、1年の在留期間だと毎年3.3万円が発生し、5年間あたりで換算すると前者が7.5万円に対し後者は16.5万円となります。また、外部の専門家に更新手続きを委託しているのであれば、在留期間が長ければその分更新頻度が減り、委託費の発生タイミングも減り、結果的に会社の負担総額は小さくなります。
④ 施行前の前倒し申請を検討する
2025年の改定と同様、10月1日の施行前に申請を済ませれば、旧料金が適用される可能性もあります。ただし、更新申請は在留期限のおおむね3か月前からしか行えないため、在留期限が2027年1月以降の人は施行前に申請できません(在留資格の変更申請は、事由が生じ次第随時可能)。まずは対象者を洗い出し、前倒しが可能な人については9月中の申請を検討しましょう。
⑤ オンライン申請を活用する
窓口申請よりもオンライン申請のほうが手数料は低く設定されています(区分ごとに割引あり。ただし在留期間3か月以下と永住許可は対象外)。地味ですが確実なコスト圧縮策として、社内の手続きをオンライン中心に切り替えることも有効です。
おわりに
今回の更新料値上げは法改正に基づくものであり避けることはできません。しかし、会社側の工夫で影響を抑えること可能です。施行日である2026年10月1日に向けて、今のうちに社内の準備を進めておきましょう。
【執筆者プロフィール】

寺島有紀
寺島戦略社会保険労務士事務所 所長 社会保険労務士。
一橋大学商学部卒業。新卒で楽天株式会社に入社後、社内規程策定、国内・海外子会社等へのローカライズ・適用などの内部統制業務や社内コンプライアンス教育等に従事。在職中に社会保険労務士国家試験に合格後、社会保険労務士事務所に勤務し、ベンチャー・中小企業から一部上場企業まで国内労働法改正対応や海外進出企業の労務アドバイザリー等に従事。
現在は、社会保険労務士としてベンチャー企業のIPO労務コンプライアンス対応から企業の海外進出労務体制構築等、国内・海外両面から幅広く人事労務コンサルティングを行っている。
HP:https://www.terashima-sr.com/
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最終更新: 2026年9月1日


