
年末調整の電子化は、次の5段階で進めます。①対象者と方式を決める、②スタッフに入力方法と控除証明書の受け取り方を案内する、③スマホやPCで申告書を回収して不備を確認する、④年税額を計算して給与に反映する、⑤申告書を電子データのまま保存する。現在は、従業員が申告書を電子で提出する場合、税務署長への事前承認は不要とされています。アルバイト・パートが多い飲食店では、手順のなかでも「店舗ごとの回収」と「対象者の振り分け」を最初に設計しておくと、本社の手入力と差し戻しを減らしやすくなります。
この記事は誰向けですか?
多店舗の飲食チェーンや外食企業で年末調整を担当する、本社の労務・総務担当者向けです。11月に各店舗へ紙の申告書を配っている企業を想定しています。回収しても記入漏れが多く、12月の繁忙期に店長へ催促を繰り返している場合も当てはまります。
紙の年末調整では、なぜ12月に負担が集中するのですか?
年末調整の書類を回収する時期と、飲食店の年末繁忙期が重なるからです。紙で運用すると、次の流れになりがちです。
- 本社から店舗へ申告書を送り、店長がスタッフに配る
- ホールやキッチンのスタッフがシフトの合間に手書きで記入する
- 控除証明書の添付漏れや記入ミスで、店舗経由の差し戻しが起きる
- 本社で紙の内容を給与システムに手入力する
このうち時間がかかっているのは、記入よりも「店舗と本社の往復」です。電子化で短くしやすいのも、この往復の部分です。
年末調整を電子化する具体的なやり方は?
ステップ1:対象者と方式を決める
まず、年末調整の対象者と対象外の人を分けます。飲食店では、掛け持ちのスタッフ、短期アルバイト、年の途中に入社・退職した人が混ざります。他社に扶養控除等申告書を提出している乙欄のスタッフは、原則として自社では年末調整をしません。対象者の名簿を先に作っておくと、案内を送る相手を間違えにくくなります。
ステップ2:スタッフへの案内を準備する
入力するのはスマホが中心になります。PCのメールアドレスを持たない学生アルバイトも多いため、案内の方法と締切を店舗単位で決めておきます。生命保険料控除などの証明書は、保険会社から電子データで受け取れる場合があります。マイナポータル連携を使う方法もあります。どこまで対応するかは、自社で使うシステムに合わせて決めてください。
ステップ3:申告書を回収し、不備を確認する
入力漏れや添付漏れは、提出の時点で気づける仕組みにします。こうすると、後から店長経由で差し戻す回数を減らせます。本社は、店舗ごとの提出状況を一覧で確認できるようにしておきます。
ステップ4:年税額を計算し、給与に反映する
回収したデータで年税額を計算し、12月または翌年1月の給与で過不足を精算します。給与計算システムへのデータの渡し方は、手入力・CSV取込・システム連携のどれになるかを事前に確認します。
ステップ5:電子データのまま保存する
申告書は、税務署から求められたときに提示できる状態で保存します。保存期間は原則7年間です。保存期間・保存方法・税制改正の内容は、国税庁の最新情報で確認してください。
多店舗の飲食チェーンでは、誰が何を担当すればよいですか?
紙の運用では、配布・催促・回収のほとんどを店長が担っています。電子化した後の分担の例は次のとおりです。
- 本社労務:対象者の振り分け、案内の配信、不備の確認、年税額の計算、保存
- 店長・エリアマネージャー:未提出者への声かけ(提出状況は本社が共有)
- スタッフ本人:スマホで入力し、控除証明書を添付する
店長の役割を「回収係」から「声かけだけ」に縮めると、繁忙期の店長が書類対応に取られる時間を減らせます。
電子化の前に確認しておくことは?(チェックリスト)
- 乙欄・掛け持ち・短期スタッフ・年の途中の退職者を、対象者から除けているか
- 国外に扶養親族がいる外国人スタッフについて、親族関係書類・送金関係書類の提出方法を決めているか
- スマホだけで入力が終わるか(メールアドレスがない人も提出できるか)
- 店舗別・ブランド別の提出状況を本社で確認できるか
- 給与計算システムへのデータの渡し方(手入力/CSV/連携)が決まっているか
- 案内の開始を、12月の繁忙期より前に設定しているか
よくある失敗は?
- 全員に一斉配信する:対象外の掛け持ちスタッフからも申告書が届き、扱いの確認に時間がかかる。
- 証明書の受け取り方を案内しない:電子の証明書をどう添付するか分からず、結局紙で届く。
- 紙と電子が混在したまま:どちらで提出済みかを追えず、本社が二重に確認することになる。
入社手続きと年末調整を同じ仕組みでそろえる選択肢
年末調整を電子化する方法は、主に3つあります。国税庁が無償で提供する年末調整控除申告書作成用ソフトウェアを使う方法、汎用の人事労務クラウドを使う方法、業界向けのサービスを使う方法です。従業員が少なく雇用形態が単純なら、無償ソフトや今の給与システムの機能で足りる場合もあります。
アルバイト・パートが多く、店舗やブランドが多い飲食チェーンでは、入社時に集めたスタッフ情報を年末調整までどう管理するかが論点になります。TECH CREW株式会社が提供する「人事CREW」は、飲食店のための入社手続きクラウドです。採用決定から初出勤までの距離を短くすることが中核で、入社書類の提出はスタッフのスマホで完結します。年末調整は「年調CREW」、給与明細は「明細CREW」として、モジュールで追加できます。
- 年末調整(年調CREW):¥480/アカウント・年(税抜・1アカウントあたりの基準価格)
- 給与明細(明細CREW):¥40/アカウント・月(税抜・同上)
年調CREWの具体的な機能や、今の給与システムとの連携方式は、導入前に必ずご確認ください。どちらも運用条件によって変わります。
よくある質問(FAQ)
Q. 年末調整を電子化するには、税務署への申請が必要ですか?
A. 従業員が申告書を電子で提出する場合、現在は税務署長への事前承認は不要とされています。最新の取り扱いは国税庁で確認してください。
Q. 紙で提出したいスタッフがいる場合は?
A. 紙での提出を受け付けることもできます。ただし紙と電子が混ざると管理が難しくなるため、紙で提出する人の条件と回収方法は先に決めておきます。
Q. 掛け持ちのアルバイトも年末調整の対象ですか?
A. 自社に扶養控除等申告書を提出している人(甲欄)が対象です。他社に提出している乙欄の人は、原則として自社では年末調整をしません。
Q. いつから準備を始めればよいですか?
A. 12月の繁忙期に回収が重ならないよう、対象者の振り分けと案内の準備は秋のうちに終えておくのが目安です。
まとめ
- 電子化は「対象者を決める→案内する→回収・確認→計算→保存」の5段階で進める
- 飲食店では、乙欄・短期・外国人スタッフを最初に振り分けることが重要
- 店長の役割を「回収係」から「声かけ」に縮めると、繁忙期の負担を減らしやすい
アルバイト・パートの入社手続きから年末調整までの書類回収に時間がかかっている場合は、どこまで手入力を減らせるかご相談ください。
※税制・保存要件は改正されることがあります。最終的な判断は、国税庁の情報や税理士・社労士などの専門家に確認してください。
最終更新: 2026年10月19日


