
企業での教育訓練に対する助成金「人材開発支援助成金」とは?「人材育成支援コース」「人への投資促進コース」「事業展開等リスキリング支援コース」を社労士が解説!
はじめに
企業の様々な課題解決には、「従業員の人材育成」、「スキルアップ」が欠かせません。
今年こそ教育研修に力を入れたい!という企業様は非常に多い一方で、ただでさえ忙しい業務をこなしながら、その費用であったり、機会であったりを捻出することは各社様にとってやはり悩みの種となっているようです。
ただご存じのように、現在政府は国民の「学び直し」や「生涯教育」に強く力を入れており、特に企業で働く労働者に対する教育訓練の実施を一層推進すべく、各種助成金制度を年々拡充しています。「助成金が活用できるのなら、なんとか日々の合間を縫って、教育訓練の実施に踏み切ろう!」とお考えの企業様もいらっしゃるのではないでしょうか。
今回は、企業で実施する教育訓練を対象とした助成金である、人材開発支援助成金についてご紹介します!
人材開発支援助成金とは
事業主が労働者に対し訓練を実施した場合に、その経費や訓練期間中の賃金の一部等が助成される助成金です。労働者に対して職務に関連した専門知識及び技能の習得をさせるための職業訓練等を計画的に実施した場合、人材育成制度を導入し労働者に適用した場合等において、訓練経費や訓練期間中の賃金の一部等が助成されます。
人材開発支援助成金には複数コースがあるのですが、本記事では、特に注目度の高い
- 人材育成支援コース
- 人への投資促進コース
- 事業展開等リスキリング支援コース
に関して、制度の概要をご紹介します。
なお、人材開発支援助成金には助成限度額(一人あたり経費助成限度額や賃金助成限度額、1事業所ごとの支給額制限、訓練等受講回数の制限等)がありますので注意が必要です。
おすすめコース①人材開発支援助成金(人材育成支援コース)
雇用する労働者に対し、「職務に関連した、10時間以上の訓練等」を実施する事業主等に対して助成されるものです。具体的には以下の訓練が助成対象になります。
①人材育成訓練:
職務に関連した専門的な知識及び技能の習得をさせるためのOFF-JTを10時間以上行った場合に助成されるものです。
②認定実習併用職業訓練:
中核人材を育てるために実施するOJTとOFF-JTを組み合わせた6ヶ月以上の訓練を行った場合に助成されるものです。事前に厚生労働大臣の認定を受けた、OJTとOFF-JTを組み合わせた訓練である実習併用職業訓練(認定実習併用職業訓練)を実施し、ジョブ・カードによる職業能力の評価を実施する必要があります。
③有期実習型訓練:
正社員経験が少ない有期契約労働者等を対象に、正規雇用労働者等への転換を目指すOFF-JTと適格な指導者の指導の下で行うOJTを組み合わせた2ヶ月以上の訓練を行った場合に助成されるものです。訓練開始前に、キャリアコンサルタント等によるジョブ・カードを活用したキャリアコンサルティングを実施し、受講予定者について、訓練受講の要否を確認し、助成対象となるかを確認する必要があります。
賃金助成は、中小企業の場合1人1時間あたり760円(中小企業以外380円)で、要件を満たせば加算のルールもあります。経費助成は、①~③の訓練別、正規・非正規等従業員区分別に、45%~70%まで幅があります。OJT実施に対しては定額助成になります。(別途助成限度額に関するルールがあります。)
おすすめコース②人材開発支援助成金(人への投資促進コース)
人材開発支援助成金(人への投資促進コース)は、「人への投資」を加速化するため国民の方からの提案を形にした訓練コースです。国民の声をもとに創設された助成金であるため、バラエティーに富んだラインナップとなっていますが、「デジタル人材・高度人材の育成」「労働者の自発的な能力開発の促進」「柔軟な訓練形態の助成対象化」が施策の3本柱になっています。人への投資促進コースは、次の5つの訓練で構成されています。
①デジタル/成長分野(高度デジタル人材訓練/成長分野等人材訓練)
高度デジタル人材の育成のための訓練や大学院での訓練を行う事業主に対する高率助成を新設
②IT分野未経験(情報技術分野認定実習併用職業訓練)
IT分野未経験者の即戦力化のための訓練を実施する事業主に対する高率助成の新設(OFFJTとOJTを組み合わせた訓練)
③サブスクリプション(定額制訓練)
サブスクリプション型の研修サービスによる訓練への助成の新設
④自発的能力開発(自発的職業能力開発訓練)
労働者が自発的に受講した訓練費用を負担する事業主への助成の新設
⑤教育訓練休暇(長期教育訓練休暇等制度)
働きながら訓練を受講するための休暇制度や短時間勤務等制度を導入する事業主への助成の拡充
助成率、助成額については、各コースごとに「賃金助成額」「経費助成額」「OJT実施助成額(情報技術分野認定実習併用職業訓練のみ)」等区分によって定められていますが、
・高度デジタル人材訓練/成長分野等人材訓練は、中小企業に対し75%の経費助成率(中小企業以外は60%)
・情報技術分野認定実習併用職業訓練や定額制訓練は、中小企業に対し60%の経費助成率(中小企業以外は45%)
・自発的職業能力開発訓練は経費助成率45%
等、とても高い各助成金率が並んでいます。(別途助成限度額に関するルールがあります。)
人への投資促進コースの中でも、各訓練ごとに詳細が大きく異なりますので、申請を検討する際にはどの訓練にするか狙いを定めたうえで、入念な確認が必要です。
おすすめコース③人材開発支援助成金(事業展開等リスキリング支援コース)
人材開発支援助成金「事業展開等リスキリング支援コース」は、
・新製品の製造や新サービスの提供等により新たな分野に展開する
・デジタル・グリーンといった成長分野の技術を取り入れ業務の効率化等を図る
このような目的のもと、それぞれに対応した人材の育成に取り組む事業主を対象に、訓練経費や訓練期間中の賃金の一部を高率助成により支援する制度です。支給対象訓練は以下を満たすものであることが必要です。
①助成対象とならない時間を除いた訓練時間数が10時間以上であること
② OFF-JT(企業の事業活動と区別して行われる訓練)であること
③職務に関連した訓練であって以下のいずれかに該当する訓練であること
・事業展開を行うにあたり、新たな分野で必要となる専門的な知識及び技能の習得をさせるための訓練。
・事業展開は行わないが、事業主において企業内のデジタル化・デジタルトランスフォーメーション(DX)化や、グリーン・カーボンニュートラル化を進める場合に、これに関連する業務に従事させる上で必要となる専門的な知識及び技能の習得をさせるための訓練。
上記からもわかる通り、この助成金には「事業展開」「DX」「グリーン」といった、3つのキーワードがあります。それぞれの説明としては以下の通りです。
「事業展開」:
新たな製品を製造もしくは新たなサービスを提供すること等により、新たな分野に進出することを指します。事業や業種の転換や、既存の製品やサービスの製造方法や提供方法の変更も事業展開とみなされます。(例えば、日本料理店が、フランス料理店を新たに開業する等。)
「デジタル・デジタルトランスフォーメーション(DX)化」:
デジタル技術を活用して、業務の効率化を図ることや、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス・ビジネスモデルを変革する等、競争上の優位性を確立することをいいます。(例えば電子契約システムを導入しペーパーレスを実現する等。)
「グリーン・カーボンニュートラル化」:
徹底した省エネ、再生可能エネルギー等の活用等によりCO2等の温室効果ガスの排出を全体としてゼロにすることをいいます。(風力発電機や太陽光パネルの導入等。)
これらのいずれかに該当する教育訓練の実施が必要です。職務に直接関連しない訓練、職業人として共通して必要となるものなどは対象とならないため、注意が必要です。
経費助成率は中小企業に対しては75%(中小企業以外には60%)と非常に高い助成率となっています。また、訓練時間中の賃金助成として1人1時間あたり中小企業に対しては960円(中小企業以外には480円)が支給されます。(別途助成限度額に関するルールがあります。)
実際の申請ステップ
大きく、下のような5つのステップで申請を進めます。詳細はコース等によって異なりますので、実際の申請にあたっては要綱をよくお読みください。
Step1 事業内計画の作成等
「事業内職業能力開発計画」の作成、「職業能力開発推進者」の選任が必要です。
Step2 計画届の提出
「訓練実施計画届」と「年間職業能力開発計画」を作成し、ほか必要書類を添付のうえ都道府県労働局に提出することが必要です。(訓練開始日から起算して1か月前までの提出が必要)
Step3 制度導入(必要なコースのみ)
「自発的職業能力開発訓練(計画提出「前」の制度導入が必要)」と「長期教育訓練休暇等制度(計画提出「後」の制度導入が必要)」の場合は、就業規則等に制度を定めることが必要となります。
Step4 訓練実施(制度の適用)
「年間職業能力開発計画」に基づき、訓練を実施します。
なお、計画を変更する場合は、あらかじめ「計画変更届」を提出することが必要です。
Step5 支給申請
訓練終了日の翌日から起算して2か月以内に「支給申請書」ほか必要な書類を労働局に提出することになります。
また、令和6年4月以降、各コース共通で一部申請書式の簡便化や要件緩和等が行われており、より一層人材開発支援助成金が使いやすくなっています。
おわりに
本記事では、人材開発支援助成金の中のお勧めとして3つのコースを取り上げましたが、人材育成支援助成金には、まだまだたくさんのコースがあります。
「業務の一環として教育研修や訓練を行いたい」「企業内での人材育成を強化したい」といった事業主の方や、「業務に追われて、新しいことを学びたいのにできていない…」「自らに新しいスキルをつけて、エンプロイアビリティを高めたい!」という従業員の方には、まさにうってつけだといえる助成金です。
政府が力を入れているこの機会を見逃さず、社内の教育研修・訓練の実施や見直しにあたり、ぜひ人材開発支援助成金の各コースに、強くご注目頂きたいと考えています!
【執筆者プロフィール】
![]() 寺島戦略社会保険労務士事務所
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最終更新: 2026年6月10日



