
源泉徴収票の「乙欄」とは、その勤務先に「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」を提出していない人であることを示す欄です。この欄に「○」があれば、その勤務先は給与から所得税を「乙欄」の税額で源泉徴収しています。また、その勤務先では年末調整をしていません。掛け持ちのアルバイト・パートで、ここを本業としていない人の源泉徴収票によく見られます。
この記事は、飲食店・飲食チェーンの労務担当者向けです。乙欄の意味、甲欄との違い、本人が確定申告を必要とするケース、入社時に確認しておくことを整理します。税額や手続きの細かな取扱いは改正されることがあるため、最新の内容は国税庁の資料や税理士・社労士に確認してください。
源泉徴収票のどこに「乙欄」があるのですか?
給与所得の源泉徴収票の下段に、「未成年者」「外国人」「中途就・退職」などのチェック欄が並んでいます。「乙欄」はその中の一つです。乙欄が適用された従業員の場合、ここに「○」が付きます。
この欄を見れば、その給与が「主たる給与」(本業の給与)として扱われたのか、「従たる給与」(副業・掛け持ちの給与)として扱われたのかが分かります。
甲欄と乙欄の違いは何ですか?
甲欄・乙欄は、毎月の源泉徴収税額を求める「源泉徴収税額表」の区分です。
- 甲欄:扶養控除等申告書を提出している人に使います。扶養親族の数を反映でき、年末調整の対象です。
- 乙欄:扶養控除等申告書を提出していない人に使います。同じ給与額なら、一般に甲欄より源泉徴収税額が高くなります。その勤務先での年末調整の対象にはなりません。
- 丙欄:日雇いなど、一定の短期雇用で使う区分です。乙欄とは別の区分です。
扶養控除等申告書は、同時に複数の勤務先へ提出することはできません。提出できるのは1か所だけです。そのため、掛け持ちをしているスタッフは、主たる勤務先1か所が甲欄、それ以外は乙欄になります。
飲食店で乙欄のスタッフが生まれやすいのはなぜですか?
飲食店では、学生・主婦(主夫)・フリーランスなどが、ほかの仕事と掛け持ちでホールやキッチンに入るケースが少なくありません。乙欄のスタッフが生まれやすい場面は、主に次の3つです。
- 本業がほかにある:昼は別の会社に勤め、夜に居酒屋でアルバイトをしている。
- 申告書が未回収のまま:入社書類のうち扶養控除等申告書だけが戻らず、その結果として乙欄になっている。
- 同じグループ内で店舗やブランドを異動した:申告書の提出先や雇用主の扱いが曖昧になっている。
2つ目のケースには注意が必要です。本人に掛け持ちがなく、本来は甲欄で年末調整を受けられる人でも、申告書が出ていなければ乙欄で処理されます。
乙欄のスタッフは確定申告が必要ですか?
乙欄の勤務先では年末調整をしません。そのため、本人がほかの給与や所得と合わせて確定申告をするかどうかを判断することになります。
- 給与を2か所以上から受けていて、年末調整されなかった給与の収入金額と、給与所得・退職所得以外の所得金額の合計が20万円を超える場合は、原則として確定申告が必要です。
- 乙欄の勤務先しかない場合など、確定申告をすれば源泉徴収された税金の一部が戻ることがあります。
どの要件に当てはまるかは、収入の状況によって変わります。会社が本人の代わりに判断することはできません。社内で案内するときは、「勤務先からもらった源泉徴収票をすべてそろえて確定申告を検討する」よう伝え、国税庁の案内や税務署へ誘導するのが無難です。
入社時・年末調整前に労務担当が確認すること
乙欄をめぐるトラブルの多くは、入社時の確認不足から始まります。次のチェックリストで、入社時と年末調整前に確認する項目を整理しました。
入社時チェックリスト
- ほかに勤務先があるか(本業か、掛け持ちか)を本人に確認した
- 当社が主たる勤務先の場合、扶養控除等申告書を回収した
- 掛け持ちで当社が従たる勤務先の場合、乙欄で処理することを本人に説明した
- 給与計算システムの税区分(甲・乙・丙)を、回収状況と一致させた
年末調整前チェックリスト
- 年の途中で本業を辞め、当社が主たる勤務先になったスタッフがいないか
- 申告書が未回収のまま乙欄になっているスタッフがいないか
- 店舗異動やブランド間異動で、申告書の提出状況が引き継がれているか
よくある失敗と対処
- 申告書を回収し忘れたまま乙欄で1年が終わる:本人は確定申告で調整することになり、問い合わせが増えます。入社書類の回収状況を本社で一覧にして確認すると防ぎやすくなります。
- 本人が2か所に申告書を出している:申告書の重複提出はできません。どちらを主たる勤務先にするか、本人に確認します。
- 店舗ごとに紙で回収していて状況が見えない:多店舗の飲食チェーンでは、店長の手元で書類が止まりやすくなります。回収状況を本社で把握できる仕組みを用意しておきます。
申告書の回収を仕組みにするには
乙欄の判断は、結局のところ「扶養控除等申告書を回収したかどうか」で決まります。多店舗・多ブランドで、アルバイト・パートの入れ替わりが多い飲食店では、紙での回収と手入力が漏れの原因になりがちです。
TECH CREW株式会社の「人事CREW」は、飲食店のための入社手続きクラウドです。店長が渡すQRコードから、雇用契約や個人情報などの提出をスタッフ本人のスマホで完結できます。入社時に登録したスタッフ情報は、年末調整(年調CREW)の申告書回収や給与明細の配布(明細CREW)に引き継げます。料金は税抜・1アカウントあたりの基準価格で、年調CREWは年額¥480、明細CREWは月額¥40です。
ただし、甲欄・乙欄のどちらを適用するかの最終判断や、個別の税務の判断は、税理士・社労士などの専門家に確認してください。
よくある質問
Q. 源泉徴収票の乙欄に○がなければ甲欄ですか?
A. 一般には、扶養控除等申告書を提出して甲欄で処理されたことを示します。ただし、日雇いなどで丙欄が適用される場合もあります。
Q. 乙欄のアルバイトにも源泉徴収票を渡す必要がありますか?
A. はい。給与を支払った人には、乙欄であっても源泉徴収票を交付します。税務署への提出が必要になる条件は、国税庁の「法定調書の手引」で最新の内容を確認してください。
Q. 年の途中で甲欄に切り替えられますか?
A. 本業を辞めた場合など、当社が主たる勤務先になった時点で扶養控除等申告書を提出してもらえば、それ以降は甲欄で処理できます。
Q. 乙欄だと手取りが減るのはなぜですか?
A. 乙欄は扶養控除などを反映しない区分なので、毎月の源泉徴収税額が高めになるためです。最終的な税額は確定申告で精算されます。
まとめ
- 源泉徴収票の乙欄の○は、「その勤務先に扶養控除等申告書を出していない」ことを示します。
- 乙欄の勤務先では年末調整をしないため、本人が確定申告を検討します。
- 飲食店では掛け持ちのスタッフが多く、申告書の回収漏れが乙欄の原因になることもあります。入社時の確認が重要です。
多店舗で扶養控除等申告書の回収や年末調整の準備に手間がかかっている場合は、どこまで効率化できるかお問い合わせください。
参考:国税庁「源泉徴収税額表」「給与所得の源泉徴収票等の法定調書の作成と提出の手引」、国税庁タックスアンサー(確定申告が必要な人)。いずれも、記事公開時点の最新版をご確認ください。
最終更新: 2026年11月4日


